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【コラム】#2 遺産相続した自宅、兄弟でどうやって分けるか?

遺産相続した自宅、兄弟でどうやって分けるか?
「遺産相続なんてお金持ちだけが悩む問題なんじゃない?」と思っているあなた。
相続税がかかろうとかかるまいと、相続人が複数いる場合には、遺産をどのように分割するかが問題となります。

遺産のすべてが金融資産(現金・有価証券等)の場合は、配分さえ決まれば簡単に分けることが可能ですが、遺産のほとんどが不動産の場合には相続人間で揉めるケースが非常に多いです。
なぜなら、不動産は金融資産の様に簡単に分割することができず、不動産そのものの価値も明確に分からない場合がほとんどだからです。
そこで今回は、遺産相続した自宅を兄弟でどうやって分けるかについて一緒に考えていきたいと思います。

そもそも、親の遺産を相続人全員で話し合って、それぞれ自分のものにする手続きを「遺産分割」といいます。
また、遺産の分け方をめぐる相続人間の話し合いのことを「遺産分割協議」といい、協議が整ったことを書面に記したものを「遺産分割協議書」といいます。
この遺産分割協議書をもって初めて親名義の財産を自分の名義に変更することが可能となります。

相続する遺産が親の住んでいた自宅不動産のみの場合には、遺言がなければ兄弟間でその自宅をどのように分けるかを話し合わなければなりません。(遺産分割協議)
もちろん、親の遺産は兄弟が納得し、兄弟間で合意すれば必ずしも公平に分ける必要はなく、一方が自宅不動産を相続し、一方は遺産を何も取得しないということでも問題ありません。(あくまで相続人全員が納得していればの話ですが)

しかし、兄弟それぞれが自宅もしくは自宅不動産の価値相当分の金銭を遺産として欲しいと希望した場合には、自宅不動産の分け方をめぐって兄弟間で協議する必要がでてきます。
また、前述の通り、不動産はその価値算定が難しいこと、及び、土地や建物を切って分けることが困難なこと、加えて、兄弟の一方が亡くなった親と遺産である自宅不動産に同居しており、引き続き居住を希望している場合等は、自宅不動産の分け方は非常に悩ましい問題となります。

遺産分割には特に期限が定められているわけではないので、自宅不動産の場合、売却などの事情がなければ、当面、遺産分割手続きをする必要はないし、遺産分割手続きをしなくてもそのまま住みつづけることは可能です。
実際、遺産分割手続きが行われておらず、未だに自宅不動産の登記上の所有者が故人のままで放置されているといったケースを良く目にします。

しかし、この様な場合、将来自宅不動産を売却しようとしたときには、改めて相続人間で自宅不動産を誰が取得するのか話し合う必要があり、長期間放置してしまっていたことにより、遺産分割の対象者が意図せず増えてしまい、権利関係をまとめるのに大変な労力がかるといったケースも珍しくありません。
したがって遺産分割には期限がないものの、先送りせず、できるだけ早いうちに話し合って遺産分割協議を整えることが望ましいです。
なお、遺産分割には期限がないとは言え、相続放棄をする場合や、土地に「小規模宅地の特例」を適用する場合などは、期限が定められていますので注意が必要となります。

自宅を分ける4つの方法

親の遺産が自宅しかなく且つ相続人が複数いる場合の自宅の分け方には大きく分けて自宅を残すか、売却するかという選択を前提に、主として以下のA~Dの4つの方法があります。

<自宅(不動産)の遺産分割方法>

自宅を残す A 現物分割 相続人1人が単独取得する
土地を分割して分割後の土地をそれぞれ単独取得する
B 代償分割 相続人の1人が自宅を単独取得し、他の相続人は自宅を相続した人より不動産に代えて相応の金銭を取得する
C 共有 自宅を相続人共同で取得する

A 「現物分割」の特徴

「現物分割」とはその名の通り自宅を現物で分ける方法です。

自宅を現物で分けるには敷地を分割する方法があげられますが、この場合、広い自宅敷地の場合は有効に分割することが可能ですが、一般的な戸建住宅が建築可能な敷地規模の場合、当該敷地を2分割しても、敷地の一方あるいは両方が建物を建てられない敷地や、建物を建てても駐車場が取れない敷地となる場合には現実的に不可能な分割方法となります。

B 「代償分割」の特徴

「代償分割」とは、自宅を相続人の一方が単独で取得し、自宅を取得した相続人がもう一方の相続人に対し、自宅の価値に応じて相応の金銭を遺産の代わりに支払うことをいいます。

例えば、相続人が兄弟2人で遺産は3,000万円相当の自宅のみ、遺産配分をそれぞれ半分で合意した場合、自宅の取得(居住)を希望する兄が弟に対し、自宅価値3,000万円の半分である1,500万円を代償金として支払うことにより、結果的にそれぞれ1,500万円の遺産を受け取ったと同じ効果を得ることになります。

この代償分割。一見、話がいちばんスムーズにまとまりそうな印象をうけませんか?

ところが、代償分割の場合、自宅の価値が適正であるかが問題となります。土地価格の目安となるものとしては、公的評価(地価公示・地価調査・路線価等)が参考となりますが、不動産は土地の形状、環境、取引事情など個別性が強く、一般の方々にとってはなかなか判断が難しいものとなっており、一応の相場を把握したものの、実際にその値段で売れるかは極めて不透明です。

不動産の評価額について相続人間で意見の相違があり、落としどころが分からない場合には、不動産鑑定士による鑑定評価を取得する等、専門家に相談してみるのも非常に有効な手段となります。

不動産鑑定士による相談はこちら

C 「共有」の特徴

「共有」とは、たとえば相続人が兄弟2人の場合、それぞれ自宅の持分を1/2ずつにし、共同で所有する方法です。

この場合、自宅を利用している相続人は居住を継続することができるというメリットがありますが、もう一方は自宅を利用できないこと、および将来お互いが合意して売却するまで、また共有者の一方に持分を買い取ってもらうまで実質的に財産を取得できないこととなります。また、権利関係も複雑になりがちなので、あまりお勧めできる方法とは言えません。

D 「換価分割」の特徴

「換価分割」とは、自宅を売却してお金で分ける方法です。

自宅を売却してお金で分ける方法は一番わかりやすく明瞭ですが、この場合、売却額等について全員の合意が必要となり、実際に買い手が現れた場合でも、相続人間で意見調整がつかなかった場合にはトラブルになりかねません。

なお、相続人が換価分割に合意している場合でも、親の名義の状態では自宅を売却することができないため、実際には、遺産分割手続きにより相続人の共有名義にしてから売却し、売却代金を持分に応じて取得する方法、あるいは相続人1人の単独名義にしてから売却し、売却代金の一部を代償金として他の相続人に支払う方法のいずれかの方法がとられることとなります。

目指せ!円満相続

以上のように自宅不動産の分け方とポイントについて説明してきましたが、不動産については相続人全員が100%納得行く様な万能な分け方はありません。

遺言があれば相続手続き上の問題を未然に防ぐことも可能ですが、遺言があった場合でも不公平感が拭えなかったりして兄弟間でしこりが残る場合もあります。

自分の親が生きている内に相続の話をすることはためらういますし、その人が元気なうちから死後の話(特に財産の話)をするのはタブー視されがちです。

しかし、どの親も子供が相続で揉めて欲しいなんて思ってはいないでしょう。また、親が存命であっても認知症になってしまった場合等には事前に話し合いをすることは難しくなってしまいます。

少しずつでも早く相続について話し合いの場を設けて、お互いに理解しあい尊重し、円満な相続を目指したいものです。

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